企業インタビュー

『職業アスリート』を確立するということ。

株式会社スポスタ

櫻又 卓

代表取締役

『職業アスリート』を確立するということ。

プロローグ

今回ご紹介する方は、アスリートに向けた様々なWebサービスを提供する株式会社スポスタ の代表取締役 櫻又卓さん。多くの現役アスリートと関わる櫻又さんに、アスリートのセカンドキャリアについてお話しを伺ってきました。現役アスリートにとっても、スポーツビジネスを目指す人にとっても、是非注目して頂きたいロングインタビューとなっております。

櫻又さんは多くの現役アスリートと関わっていらっしゃいますが、アスリートのセカンドキャリアについてどのようにお考えですか?

現在私は現役選手からセカンドキャリアの選手など、数百名と会ってきました。現役選手の悩みや不安な心境を目の当たりにし、当然引退後のセカンドキャリアで苦労している選手も見てきました。現役時代にどれだけ競技以外の社会の情報を知るか、自分の将来、セカンドキャリアについて考えるか。そして何よりも大事なことは人に会うこと、特に自分の競技以外の人に会うこと、それがすごく大事だと思って伝えています。アスリートってスポーツのことばかり考えて生きているし、当然練習、ケアの時間に取られ、限られた時間しかその他のことに使えないですよね。だからそういう出会いや得られる情報が狭かったり、少ないのも当然です。でもいざ引退した時に、どうしようっていうことが彼らが直面することなので。だから誰かが教えてあげないと自分の置かれている状況に気づかないんです。選手の周りの人たちや、自分達のようなスポーツビジネスをやっている人が彼らに啓蒙してあげないといけないと思っています。

現役時代にどれだけそういうことを知って、分かりやすくいうと僕は現役時代にどれだけ人に会えるかが重要だと思う。現役を引退すると、アスリートっていう価値が下がる、もしくはなくなってしまうって言うと厳しい言い方ですけど、あなたに会いたいっていう人が減ってしまうのは事実。どんなマイナーなスポーツでもスポーツ選手って言うと少なからず興味を持ってもらえます。そうやって興味を持ってもらえる間に人にたくさん会う。そしたら引退後、セカンドキャリアでそういう人たちがきっと支えてくれ、自分の財産になりますから。とにかく現役時代に人に会いまくれと。現役選手にもよく言うんですけど、”何をしたらいいか分からない”、そういった時に『とにかく人に会ってみたらそれが一番早い。そこで感じた事が自分の中で形になる』と思います。

現役と引退後では圧倒的に周囲の人の関心度は変わってしまう。興味のもたれ方、関心度が変わっていってしまうんです。人に会う大切さという意味では僕らも一緒。社内に引きこもっていても広がりが無いですからね。色んな所に行って色んな人の話を聞いて。僕らアスリートだったら何百人、ビジネスマンだったら何千人って会ってきています。僕も20年くらいビジネスやってきて、それでもまだ初めて聞く話がたくさんあります。アスリートにとって単純にビジネスマンに会うのもいいけれど、全く違う競技のアスリートに会うとかも良いと思います。去年はそういう機会を僕もなるべく作ってきました。

具体的にどんな機会を作られてきたのでしょうか?

現役アスリートが他の競技のアスリートと会える機会を作ってきました。主に食事の場ですね。アスリートだけでなくチーム関係のビジネスマン、協会関係とかオリンピック関係の方なども。スポスタの1周年記念パーティー(交流会)の時は200名くらいの方が来られたんです。業界も様々でサッカー、フットサル、格闘家、レーサー、プロレスとか、オリンピック目指している選手とかパラリンピック選手とか幅広く集まりました。アスリート達は最初接点が無くて緊張しているけど、僕らが”いけいけ”って言って背中を押して、スポーツ企業さんとも引き合わせて挨拶させたり、いってらっしゃい!って自分で行かせたり(笑)。

一方で女子アスリートの支援も行っているんですよ。バスケ、野球、テニス、バイク、体操とか色んな女子アスリートを束ねた女子トークを開催して、そこにゲストアスリートを招待して質問をするんです。競技環境とかギャラの話とかを赤裸々に。それをyoutubeで発信していこうとしています。これは関わる人全員が有志でボランティアでやっています。アスリートも全員ボランティア。制作会社もボランティアですが全部プロで本格的にやっています。全然収益にはならないですけど、女子アスリートを知ってもらうためにやっています。こういう場を作る事によって彼女達のことを知ってもらうことが目的で。イメージしているのは主旨は違いますが、今のアイドルみたいな存在になってもらうことで、彼女達を見て、女子アスリートになりたいなって思える人が増えたらいいなって。なのでここからしっかり情報を発信していくことが大事。アスリートを目指す方、アスリートを応援したい方が見に来るような場にしたいんです。こういった台本の無い、恋愛の話や男性には無い女性アスリートならではの身体の悩みなんかも。そういうのもみんなで話し合ってどうケアしているのかとか。こういう形で僕らはアスリートの支援を行っています。

スポーツの仕事をしようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

2つの目的というか理由があります。
1つは貧困のアスリートを無くしたいという事。アスリートの99.9%は貧困です。でもその現実をみんな知らないんです。アスリートって稼いでいるイメージがありますが、それは一部のトップアスリートだけがメディアに取り上げられていて、そのイメージが強くなってしまっているんです。でも現実オリンピックのメダリストでさえ食べていくのが大変だったりして。当然そこを目標にしている若い選手なんかは本当に苦労していて。自分で働きながら練習もして、非常に貧しい生活をしています。

彼らのほとんどの人が、小さいころに例えば近くにスポーツ教室があって参加して楽しくて、はまっていったら強くなっていって、気づいたら競合校に入ってプロに入っていった、そういう人が多い。自分で選んではいるけど成り行きの部分もある。アスリートだけが悪いというわけではない。例えばサッカー、野球だったらまだしも、もっとマイナーなスポーツだったら。基本食べていけない。それでは親がアスリートになれって勧めませんよね。子どもの夢を親が断ってしまうんです。わかりやすく言うと『職業アスリート』っていうのが成り立つ社会にしたいと思っています。そのためにはアスリートが生きていきやすい環境と社会制度などのセーフティネットも必要です。

例えば僕らベンチャーに例えると、資本金とかテナントとか、20-30年前に会社を作るのは難しくて、普通の人はできなかった。でも時代が変わって周りの環境が変わって。軍資金を持っていなくても会社を作れる時代になった。立ち上がった後も生きていけるサービス。IT技術も発展してお金をかけなくても僕らを知ってもらえるサービスとか。投資も増えている。社会の環境として企業しやすい環境になってきていると。でも一方でアスリートを見てみると、サッカーや野球はある程度システムや制度が整ってきていると思いますが、それ意外の競技はアスリートが生きていける環境が整ってないんですよ。

元々僕らは一般企業のwebの開発や、システム開発などをしていました。スポーツビジネスの仕事をするようになって。スポーツ界に携わってみると、当然僕らもスポーツ界の事を調べるようになって。その時からアスリートって貧しいよね、なんでだろうと。アスリートが使えるWebサービスも無いよね、アスリートが生きていける環境が無いじゃんっていうことに気づいたのが2013年頃です。ほとんどの選手がブログとか書いていたけど、ブログで儲けるなんて難しい話で。ブロガーっていう職業もあるけれど、儲かっているのはその中のほんの一握り。アスリートがちょっと書いたからって儲かる話じゃない。
だからアスリートが活動費を獲得できるサービスを作っていこうと。ITなら効率よくそれができると思っています。

そういった貧しいアスリートを無くすために、どのような事を考えられたのでしょうか?

成長した企業、成功したアスリートにはお金がある。だから投資もする。でも本来は成長過程の企業にお金が必要でそれはアスリートも一緒。要は根性でやればメダルがとれるっていう時代では無くて、今は質の高い練習やっていく時代。それにも関わらず、成長過程の若い子どもや学生が練習環境を選べる環境では無くて、とにかくお金がかかる。海外遠征となれば当然渡航費とか、良い指導者とかも無料で見てくれるわけではない。されにそこに当てられている国のお金って正直無いのが現状です。国のお金は全部トップアスリートにいっちゃうわけで。もしくはオリンピックの強い競技にいっちゃうわけです。そうするとマイナー競技はいつまでたっても育たない。日本ってそういう仕組みになっている。

だからもっと僕らがこういうwebサービスを使って生きていける環境を作ってあげたら、アスリートを夢にできる子どもがもっと増える、そして1日でも彼らの選手寿命をのばしてあげることができるんじゃないか。またより加速度的に成長できて国民的スターがもっと生まれるんじゃないか、というのがあって。それで僕らはアスリートの生活支援みたいな形で今のwebサービスを提供して、みなさんが我々のサービスを使ってファンとか企業からお金を集めている形を作っています。これは別に自分の小遣いを集めてね、っていうことでは無くて。これを使えば自分が成長できる資金を集められるんだと。スポスタで作った自分のサイトで寄付が集められますが、例えば5万円入ったとすると、アルバイトしている選手からしたら、50時間の労働を省けるわけですよ。この50時間を練習やケアに当てられるというのはアスリートにとってすごく大きくて。これがスポスタが提供しているサービスですね。

スポーツのお仕事をしようと思ったもう1つの理由は何ですか?

自分自身そうだったんですけど、日本ってオリンピックとかW杯とかそういう時だけスポーツやアスリートを応援するじゃないですか。テレビでやっている時だけ。たまにしか無い試合や大会のためにアスリートは尋常じゃない努力や鍛錬しているけど、誰もそれを見ていない。その割には試合の時だけ見て、勝ったら涙流して自分のことだけのように喜ぶわけですよ。負ければ当然叩くわけですよ。それってアスリートにとっては相当理不尽だなって。

今は普段アスリートと会っていて彼らの努力を知っているので、彼らが勝てば普通に応援している以上に嬉しいんです。負けても素直に”お疲れさま“って言える。そんな日本にしていきたいんです。それは日常アスリートとつながっているからです。Webは日常のアスリートの頑張りから応援してあげられえるような環境を作れます。普段からアスリートと繋がって手に届く存在に。アスリートと関われれば勝った時なんかは今までにない感動を得られるでしょうし、それがこれからのスポーツの楽しみ方、未来のスポーツのあり方なんじゃないかなって思っています。

当然結果は大事。アスリートとして。そこに行き着くまでに、やっぱそれなりに努力があるわけで。世の中には努力していない人もいるけれど、極論アスリートには努力していない人はいないと思うんですよね。度合いは違うようですけど携わっていれば、「本当に頑張ったと思うよ、お疲れさま」って言えると思います。

アスリートならではの強みってあると思いますか?

正直に言うと、無いと思います。すみません。アスリートもビジネスマンもすべてはその人次第です。
こういった質問に対して、”努力する力”、”目標設定する力”、“団結力”、こういった答えもありますけど、でもそれがアスリート全てに当てはまるとは思わないです本当に社会的なセンスがあるアスリートは極一握りだと思います。

櫻又さんの(会社としての)目標や目指していることは何ですか?

スポーツって不思議で、ピラミッド(競技人口)が大きいほどトップの人が稼げるんですよね。サッカーなんて典型じゃないですか。でもピラミッドが大きいということは負けている人口も多い、不幸な人も多いということなんですよ。それってすごく違和感を感じているんです。競技人口が多いほど稼げる、ただそのトップになることは難しい。一方でそこには貧しい人も多いっていう、その違和感をどうしたらいいんだろうっていうのがあって。だから僕らは基本的に現役アスリートを支援する会社なんですけど、現役時代に個々の選手が成長してお金を稼いで、それをセカンドキャリアに持っていこうっていうのが一つとあります。競技や業界ではなく、個です。

あと僕らがやりたいのは、『職業アスリート』を確立するということ。例えば弁護士や医者なるためのルートがありますよね。どの学校に行って、どんな試験を受けてとか。でもアスリートってそういうのが一切無いんです。子どもがもしアスリートになりたいって言っても、じゃあこういうルートで行きなっていうのが日本には無いんですよね。だからそこを作ってあげないと。子どもがなりたい夢ランキングで、スポーツ選手っていつも一番にあるんですよ。でもなっている人なんて一番少ない職業じゃないですか。その道が無いし分からないんですよね。だから子どもがせっかくそういう夢を持っているのに実現できていないっていう日本の社会に、やっぱりまだまだチャンスとかイノベーションがあるんじゃないかなって思っていて。だから『職業アスリート』を作ってあげたい。

それをもうひとつ踏み込んで言うと、アスリートってリスクはもちろん、国という責任も背負ってやっていて、ところが社会保障とかも一切無いんですよ。雇用保険や年金も。サッカー選手なんかでよく相談を受けるのは、「自分結婚できないんですよ。」っていう内容。相手のご両親がダメって言うらしく、確かに親として不安だろうし気持ちも分かる。だから僕はいつかその社会制度も着手しないといけないんじゃないかなって思っています。例えばアスリート年金とか、雇用保険、融資制度なども。海外にはそういう制度を持っている国があります。アスリートが一生食べていけるくらいの年金がもらえるので。そうやって『職業アスリート』がその道だけじゃなくてその後の保証も本来は作っていってあげないといけないなって。そうしないと子どもがスポーツ選手になりたいって言っても親がブレーキをかけちゃう。親は経済力を見ていますから、それで食べていけるのかって。ちょっと上手いからってサッカー選手になるって言われても、それ本当にリスクだよって、よく知っている親は思う。でも『もし社会制度がしっかりしていれば、アスリートっていいんじゃない』って大人がもっと言えると思っていて、そういう感覚です。

最後に、セカンドキャリアを考える現役アスリートに向けてアドバイスを頂けますか?

日本のスポーツビジネスが成熟していると感じています。だから僕らはどんどん海外にスポーツを持っていこうとしています。途上国に行って、熱量とか生きる力、そういうものをすごく感じました。アスリートもそういう所でセカンドキャリアを活かせると思う。トップアスリートがいくら日本で時間を使っても、サッカー、野球、さらにはスマホが発展したエンタテインメント。こんな各業界が成熟した日本で時間を使うよりも、途上国の、総人口が多く国民の平均年齢が若いとか、そういうところでビジネスをやった方が成長速度が早くその国の子供達や人々にも貢献できると思うので。アスリートもそういった観点が必要だと思います。国内で今までやってきたスポーツでお世話になる、とかでは無くて、今まで経験してきたことをもっと知らない世界で伝えてあげるとか。そういう道もあると思います。

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