企業インタビュー

映像制作を通して、誰かの想いの代弁者になるということの重要性ややりがいを。

有限会社タイムリー

眞井 優花

映像制作を通して、誰かの想いの代弁者になるということの重要性ややりがいを。

プロローグ

今回ご紹介する方は、様々なジャンルの映像制作を携わる有限会社タイムリーの眞井優花さん。
サッカーのスタジアムで流れるスタメン映像などを手掛けており、クリエイティブな面からスポーツに携わっていらっしゃいます。普段我々が目にしている映像の、貴重な裏側のお仕事のお話しをたくさん聞かせて頂きました。

現在のお仕事の業務内容を教えて頂けますでしょうか?

映像業界です。映像と言っても色んなジャンルがあって、私の会社はテレビ番組の撮影とCMやPV、そして中継業務を行っている会社になります。映像全般を扱っており、スポーツだけに特化しているわけではなく、あらゆるジャンルの映像制作に携わっています。

具体的にスポーツで言うと2010年からずっと某Jリーグのチームのスタメン映像を担当しています。年間通してモーショングラフィックCGの制作や撮影を行っておりまして、選手の好プレーやサポーターの熱の伝わるカットなど、年間で撮り貯めた素材をスタメン映像で使用しています。シーズン開幕までが業務の山で、映像が出来上がるのはホーム開幕の前々日の朝とか。野球の某チームのスタメン発表映像を制作した時は、納品日当日の朝方にようやく完成して、そのままスタジアムに行き、それをスタジアムのPCに仕込んで、翌日の開幕日を迎えたということもありました。スタメン映像が流れる瞬間は、クラブにとってもサポーターにとっても大切な時間と言いますか、試合前の気持ちを入れる盛り上がりの瞬間でもあるので、私たちもそれを肝に銘じて制作に力を注いでいますね。
VTRを制作するだけでなく、他にもビジョン出しの中継業務もやっています。ビジョン出しというのは、ホームスタジアムには大型ビジョンがありまして、そこに流れるリアルタイムの実写映像の撮影やCMやVTRなどの送出なども一括で請け負っています。

企画から撮影、編集まで全て請け負っているのでしょうか?

そうですね。ワンストップで一から納品するまで全て行っています。そのなかで私の行っている業務はディレクターという業務、演出のお仕事です。スポーツに絞ってお話すると、まず球団やクラブチームの方とミーティングでその時の課題や何をしたいのかというヒアリングを行います。そしてそこから企画作りに入り、それを形にしていくためのコンセプトやプロセス、デザインを提案します。普段はスポーツだけでなく音楽や家電製品のPV、企業紹介映像など、ジャンルは様々です。でもスポーツは長くやらせてもらっているので得意分野のひとつですね。

もともとクリエイティブなお仕事に興味があったのですか?

現在の会社は2006年に入社したので今年11年目になります。前身の会社では空間デザインの仕事をしていました。3年ほどグラフィックデザイナーとしてデザインワークに取り組み、新規店舗デザインのコンセプトやロゴを考えたり、家具や照明のコーディネートなどを行っていました。とても魅力的な仕事ではありましたが、私が室内で大人しく出来るタイプではなかったんですね。実際パソコンに向き合う時間が多かったので、もっといろいろな人と関わってロケであらゆる場所に行くことができる映像業界にもともと興味があったので、今の業界に転身しました。

スポーツのお仕事の時に気を付けていることはありますか?

スタジアムで流す映像を作る上では、私自身も実際に現場に行き、スタジアムの熱や、クラブ、サポーター、選手の強い思いを感じるように心がけています。またチーム側の目線とサポーター側の目線と、両方を持っていないと良いモノができないと考えています。現場の空気感をしっかりと自分の中に得るために、現場に行くっていうことは欠かせないですね。

もう一つ気をつける点といえば、どんな現場においても、あくまで選手達の本業は、試合で結果を出すことなので、そこは邪魔をしないということですね。色々とやって頂きたいことはあるんですけど、「極力撮影時間は長引かせない」とか、「メンタル的な邪魔になることは絶対にしない」などの配慮すべきことは多いですね。だけど、遠慮しすぎて良いものができるかといったら別なので、その選手のことをよく理解して、場の空気感を読み取るというのがすごく重要になります。スポーツ選手に限った話では無いですが、短時間の中で物事を進めていく上では、何を依頼し、どういうことをしてもらいたいのかということを、的確・簡潔に伝えるスキルを養うことが大切だと思います。長い説明や雰囲気トークではきっと伝わらないので…。これは簡単なことではなく、いざ現場ではプレッシャーがあったり、緊張したりもするので、なかなか難しいんですよね。でも場数を踏むことで都度得る教訓とハートを強く持つこと、現場を託されたという使命感で私も挑んでいます。

思い出に残っているお仕事は何ですか?

2つありまして、1つ目は自分が作った映像が実際にスタジアムでお披露目される瞬間です。流れた映像に連動してファンやサポーター、スタジアム全体が手拍子で呼応し盛り上がってくれた時は鳥肌ものでした。360度、2万人近いファン・サポーターが自分の作った映像に合わせて手拍子してくれた時は、クリエイター冥利につきるなと思える瞬間でしたね。特に映像を初披露する時は制作した映像の良し悪しがジャッジされる瞬間でもあるので、緊張とほっとするのが入り混じった感覚になります。ちなみに映像はシーズンで複数回変えています。

2つ目は、震災から20年という節目の年だった時に、ある野球の球団の方から相談を受けました。20年前の震災時、その球団は甚大な被害を受け、選手も含めてみんなが被災し絶望的な状況のなかで、当時の選手やチームを支えてくれたのは、街の人々、当時のファンだったそうです。
あの時、みんなが一丸となって闘ったからこそ、今のチームがあるんだということを、20年経った今でも決して忘れていないということを映像を通して伝えたい。球場に足を運んでくれた皆様に伝えたいんですと、そう言った球団の強い願いがこもったご相談でした。

非常にデリケートな題材だったので、プレッシャーはありました。ファンは年齢層も幅広く、実際に震災に遭われた方もいるし全く関係無い方もいます。私自身、震災当時は京都にいたので震災を経験していて覚えているんですが、直接的に神戸で震災に遭っているわけでは無かったので、逆にそれが良かったかなと思います。どんな案件でも「主観的な目線と客観的な目線の両方を持ち合わせながら作る」を心がけているのですが、それがしやすかった。そのスタンスが今回のターゲットにはまるんじゃないかと。「あの時、震災を経験したファンの皆様へ」ではなく「今のチームを愛するファンの皆様へ」というメッセージで伝えていきました。一部は弊社の撮影チームで撮影し、また当時の貴重な素材を多く使用してメッセージを込めて編集しました。実際に球場で流れた後は沢山の反響を頂きました。球団の方にも感謝の言葉を頂けて、私の中で大きく印象に残るお仕事となりました。映像制作を通して、誰かの想いの代弁者になるということの重要性ややりがいを、この仕事を通して改めて考えさせられました。

もともとスポーツが詳しいわけでは無かったんですよね?

私はスポーツに関わるお仕事を探していたというわけでも、そんなにスポーツが詳しいわけでもなかったんです。仕事を通じてスポーツの魅力を知るようなりました。私自身水泳はやっていたので、根性論やスポ根魂のようなものは持ち合わせていたかもしれませんが...。でも何かしらスポーツを経験していたことや、やっていた影響は大きいと思います。スポーツの熱や想い、苦しさ、そういうのを知っていると知らないのでは全く違ったなと。スポーツをすることの魅力を自分自身で知らないと、なかなかその感覚は伝えられないと思うんですね。その何気ない瞬間にドラマがあるんだとか、その空気感とか。

眞井さんのお仕事を憧れる人は多いのでは?こういうスキル、考え、行動できる人は向いているっていうアドバイスはありますか?

興味の幅が広い方が向いていると思います。マルチにいろいろなことに興味を持てる方。あらゆる情報を入れることが苦にならない方ですね。サッカーの案件をやりながら野球の案件をやったり、神戸で仕事をしながら、翌日は東京で仕事をしていたり。日々いろいろな案件に携わりますので。それぞれの魅力を理解できる柔軟性は大切かなと思います。

今後の目標を教えて頂けますか?

この仕事でしか味わえない、私しか知らない感覚ってあると思うんですね。仕事を通して感動した事とかやっていて良かったこととか、そういうものを後輩に伝えていきたいです。人を育てること、興味を持ってもらえるように何かしらアクションをしていく、そういうことをしていかないといけないと感じています。
制作にはテンプレートのようなものはなくて、最良の伝え方は何かを考えながら、常に変化し続ける仕事です。作るからには費用対効果がきちんとあるものを作らないと意味がないですし、ただイメージをカタチにするだけでなく、自分達の売っている商品(映像)に自分達だからこそできるクオリティーや付加価値をつける事のやりがいを感じてほしいです。私もまだまだなので偉そうな事は言えませんが、臆する事なく高い目標を持って挑戦したい。そんな風に思える仲間と今後も映像を作り上げていきたいです。

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