企業インタビュー

今までお世話になってきたスポーツという分野で、人を幸せにできるような人間に

株式会社シェアトレ

木村友輔

代表取締役

自分が今までお世話になってきたサッカーやスポーツという分野で、将来会社を作って且つ人を幸せにできるような人間になりたいなと感じました。

プロローグ

今回ご紹介する方は筑波大学サッカー部 3年生の木村友輔さん。木村さんは筑波大学が主催するビジネスコンテストでの優勝を機に、3年生になるところで休学をして株式会社シェアトレを立ち上げました。取材をさせて頂いたのは筑波大学 学生宿舎のど真ん中にある一室。ここは木村さんの仕事スペースで筑波大学から無料で提供されているそうです。木村さんの他に同じく筑波大学の学生4名の方と共に働いていらっしゃいます。

現在のお仕事内容を教えて頂けますか?

“シェアトレ”というトレーニング共有サービスで、全国の指導者達がそれぞれ自分自身の練習メニューを投稿して共有できるサービスです。現在は全国から600以上のメニューが集まっており自分たちのレベルにあった練習メニューを探すこともできます。少年サッカーは特に大半の方がボランティアでサッカーの指導をしており、土日の休日を返上してまで教えに来てくれる熱のある方たちが多いです。しかし指導者の負担はとても大きく悩みを抱えている指導者も多くいます。私自身も少年サッカーで指導をしているんですが、大学1年生の時に初めて指導に携わった時「練習を考えるのってこんなに難しいんだ」と感じました。ボランティアコーチの人の中にはサッカー経験者が無い人もいるので、正しい練習方法も分からないまま子ども達に指導をしていて、すごく不安に思っている人もいます。子ども達にとっても、小学生という大切な時期でサッカーに最初に触れる時期じゃないですか。そこで適切な指導を受けられないとサッカーを嫌いになってしまうかもしれない。せっかく才能があるのにその才能をつぶしてしまうかもしれない。そういう不安がある中で、ボランティアコーチがここ(シェアトレ)を見たら、どんな練習をやったら良いのか、手順とかポイントとか、そういうのが全て分かるようになっています。他にも怪我予防などのコラムがあるんですけど、これらは筑波大学の教授やOBの先輩方と連携して配信している記事もあります。今私は筑波大学の体育専門学群というところに所属をしているのですが、体育に関して日本の最高峰の教授達が周りにいるわけなので、そういった方々から意見をもらえるのは強みですね。

今のサービスをやろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

筑波大学のサッカー部は約160人の部員がいて、その9割が地元の少年サッカーチームに配属されて4年間コーチをすることが伝統なんです。それで私も大学1年生の時地元の少年サッカーチームに配属されたのですが、初めての指導がすごく不安でうまくいきませんでした。自分が少年サッカー時代にやってきた練習メニューをやってみても全然うまくいかないですし、インサイドなどの基本用語もサッカー初心者の子には全然伝わらなくて。そんな時に、12年間サッカーを現役でやっている僕らでさえ指導することが難しいのだから、他の全国にいるサッカーを経験したことないようなボランティアコーチの方はもっと大変だろうなと思いました。実際に指導者の方に聞いてみると「毎週の練習メニューを考えるのが大変」といった声を聞いたり、練習試合に行った時に意図していることを子供達に伝えられなくてイライラして怒鳴ってしまうという意見を聞いたりしました。実際に僕自身も指導がうまくいかなくて子どもを泣かせてしまった経験があったのでこういった指導者の指導レベルを底上げでき、指導者の負担を減らすにはどうすればいいのか考えるようになりました。

それでちょうどその時に一人暮らしをしたので自炊で料理共有サイトを使っていたんですけど、料理共有サイトがあるんだったら練習メニューの共有サイトがあってもいいのではないかと思いました。実際に調べてみると練習の動画を貼って終わり、というような一方的に流しているサイトはあったのですが指導者同士で共有できて成功体験とかを語って集まれるような場所が無かったんです。もっと指導者の不安や抱え込んでいる悩みとかに踏み込んだサービスを提供して指導者の助けになりたいなという思いで始めました。

なぜ学生時代に会社を立ち上げようと思ったのですか?

まずアイデアが出た時に純粋に形にしたいと思ったんです。「アイデアに価値はない」と思っていました。そこですぐ大学内の起業家育成プログラムに参加し、シェアトレのアイデアを話したら一緒にやりたいと言ってくれる先輩が3人集まりました。

私はもともと将来スポーツビジネスで起業をしたかったんです。だから筑波大学の体育に入りました。でも色々考えて学生中がいいなって、何事も早めに経験しておいた方が良いなって思ったんです。目の前に困っている人がいて、僕らが解決できるアイデアがあって、しかも現場でコーチをやっていてコーチ達の気持ちも分かる。だから自分で解決したいなっていう思いが強かったです。

スポーツビジネスに携わりたいって思ったのはいつ頃なのでしょうか?

高校1年生の時です。当時都内のクラブチームに入っていたんですけどレベルが違いすぎて、プロまでの距離が自分で推し量れてしまったんです。小学生の頃から漠然とプロになりたいと思って頑張っていて、ある程度のレベルのチームまで行けたんですけど才能の部分とか、怪我も多くて半年間プレーができないとか、そういうのを横目に自分はプロの世界では通用しないのではないかと心が折れてしまいました。そこで目指すべき夢が無くなってしまったんです。

プロ諦めてどうしようかなって悩んでいた時にたまたまふらっと本屋さんに入ったんです。
そこで手にしたのが稲盛和夫さんの『生き方』という本で、その本にすごく衝撃を受けました。経営者の生き方ってすごくかっこいいなって。人格者で、周りの人を幸せにしていて、すごく素晴らしいなと思いました。せっかくビジネスするのであれば自分が今までお世話になってきたサッカーやスポーツという分野で、将来会社を作って且つ人を幸せにできるような人間になりたいなと感じました。

クラブチームはすごくお金がかかるんです。都内の勉強に力を入れている中高一貫校に通っていたのですが、学年で僕だけクラブチームでやっていました。サッカーが強いところでやりたいとわがままを言って通わせてもらっていたのにもかかわらず、結局プロを諦めてしまったので親に対してすごく申し訳ないという気持ちがありました。部活に戻りたいって言ったんですけど親には最後まで続けなさいって言われて、高校3年生まで続けました。高校時代にクラブチームでお金をかけさせてしまった分、大学は国公立に行きたいなと思って。国公立でスポーツって言ったら筑波大学しかなかったので、高校1年の時から部屋に“筑波現役合格”って書いた紙を部屋に貼っていました。勉強は頑張りましたね。クラブチームに入るとチームによっては高校3年生の10月くらいまで現役をやるので、そこからセンター試験に向けて頑張ろうとしても焦ってしまうのは高1の時から先輩を見て知っていました。塾に行く時間ももちろん無かったので、移動中は必ず勉強するというルールを自分の中で決めてずっとやってきました。移動中は単語、駅からグラウンドまではリスニングやって、みたいな。そういうのを高校1年からこつこつやっていたので後から焦るということは無かったです。

お仕事を通してやりがいを感じる時はどんな時ですか?

サービスをスタートして2-3ヶ月だったと思うんですけど、サッカーの集まりみたいな会に出向いて名刺を渡しながら営業をしていたんです。そしたらある一人の方が、名刺を渡した瞬間に「これ知っています、毎日使っていてすごく助かっています!」って言ってくれたんです。その方のチームは部員が多くてコーチがCチームまで目を向けられないそうなんです。指導者が足りていないチームだったらしくて、選手が自分達で練習メニューを考えたり逆にコーチがこういうのがあるんだよっていうのを選手達に見せたり、そうやって役に立っていますって言ってもらえました。その時すごく嬉しかったですね。インターネットって良い意味でも悪い意味でも人と直接接していないので、ユーザーの顔が見えなくちゃんと伝わっているのが分かりづらいんです。でも実際現場に行って、「使っていますよ」っていう生の声を聞いた時にやっていて良かったなって思いますね。今でも多くの方が見てくれるようになって、その分責任とかも感じます。

お仕事をしていて大変だなと思う時はどんな時ですか?

今扱っているものは答えが無いもので、指導とかコーチングってこれが正しいということが言えないものなんです。指導者の個性もありますし、子ども達もそれぞれに個性があってその子にあった指導があります。だからメディアのように一方的に情報を発信するのではなく、多くの人が集まりそこで意見が飛び交うプラットフォームのような場所にしたいと考えています。どうしても人を引き付けるためには何かしらの発信をしないといけないですし、答えが無い分批判もされますし。そういう世界に対してどれだけ責任を持ってやっていくのかっていうことを日々考えています。

これからの目標を教えていただけますか?

どうやって子ども達に教えたら良いか不安を抱えている指導者が、このプラットフォームに集まることによってその不安が軽減されること。尚且つ横のつながりとか、過去の指導者達の経験とかが詰まっていて無料で学べるかつコミュニケーションがとれる。自分達のチームの成長につながる、そういったプラットフォームを作ってずっと使い続けてもらいたいなと思っています。ネットの良いところはデータを残せるところだったり、距離が離れていても繋がれるところだったりするので。そういう日本の指導者が必ず使うプラットフォームというのをこの世に残せたらと思っています。1年間経営してみて自分は人のためになる事業を作るのが好きなのだと感じました。ユーザーの人に感謝される時が何よりも嬉しかったです。なのでスポーツ分野の他のサービスもどんどん作ってみたいですし、自分の原体験があって本気で取り組めるものであればスポーツ以外のサービスにも挑戦してみたいと思います。

会社概要

株式会社シェアトレ
https://www.sharetr-soccer.com/