企業インタビュー

アスリートにとって重要な「爪の保護」

株式会社TAT

代表 髙野 芳樹 / 森脇 栞里

アスリートにとって重要な「爪の保護」

プロローグ

今回ご紹介するのは、ネイル業界の最大手商社「株式会社TAT」。
「ネイル」と聞いて皆さんは何を思い浮かべたでしょうか? おそらく多くの人が「女性のオシャレ」を想像したと思います。
しかしながら、ネイルにはオシャレ以外の需要がたくさんあり、その中でもアスリートからの需要が高いと、社長の髙野芳樹さんは言います。

アスリートからのネイル需要とは、どのような事でしょうか?

髙野社長: 私自身も学生時代はサッカーに取り組んでいたのですが、頻繁に足を踏まれる等して爪が傷んでしまう。Jリーガーのようなトップアスリートともなれば、全部の指が真っ黒になってしまっている事も、決して珍しくはありません。そういったフットネイルの保護に関して、サッカーに限らずラグビーやバスケット等、多方面のアスリートからの需要があります。
また、様々な種目のアスリートの話を聞いてみると、野球選手もネイルに不安を抱えている事が分かりました。特にピッチャーが球をリリースする時に、指爪を痛めてしまうケースがあるのです。そこから細菌などが入ってしまっては、競技パフォーマンスにも多大な影響を及ぼしかねません。

株式会社TATではアスリート向けの商品も販売されているのですね。

髙野社長:はい。昨年2018年1月に「市場開発部」という新組織を発足し、アスリート向けの体制をスタートさせました。現在、日本のネイル業界市場は、殆どが女性のオシャレ向けの商品やサービスで約2000億円の産業と言われています。ただ、先述の通りアスリートからの需要をはじめ、まだまだ市場に開発の余地があると感じていますし、そこも弊社の使命であると考えています。
ネイル業界以外でも、世の中に汎用している商品やサービスには必ず「無いのが当たり前だった物が、有るのが当たり前になる」という瞬間があると思います。例えば、サッカーのスネ当て(レガース)なんかもそうですよね? 少し昔まではレガースなんてつける選手いなかったのに、現代サッカーでは装着が義務付けられています。どう考えてもレガース無しだと怪我のリスクが高い。将来的にはアスリートネイルもそういった域を目指したいと思います。

森脇さんは新卒1年目にも関わらず、立ち上げメンバーに任命されたそうですね。

森脇さん:学生時代から「ネイル業界以外でのネイル価値を向上させたい」という思いがあり、それを汲み取ってもらっての辞令でした。
多くのアスリートの場合、ネイルが傷んでいてもそれが普通だと思っており、ケアしないのが当たり前というような風潮があります。理由としては男性がネイルサロンに入店しづらかったり、そもそもそういった施術ケアできる技術者が少ないのが現状です。そういった課題を解決する為に、一般社団法人アスリートネイル協会 ( =理事は元プロ野球選手の岡本篤志氏 )が取り組んでいる「アスリートネイルトレーナーの養成」にも弊社として寄与しています。

やはりアスリートと直接関わる機会も多いですか?

森脇さん:商品化に向けては、アスリートからのヒアリングが欠かせません。なので様々な種目の選手に積極的に会って、彼らからの要望を新商品企画に取り込むようにしています。
もちろんプロアスリートに限らず、学生アスリートに対しての支援にも取り組んでいきたいと思っています。アスリート向け商品の販路はこれから拡大予定ですし、ぜひ一度使ってみて欲しいです。

海外ではネイルを用いての慈善活動もあるようですね。

髙野社長:Polished Man(ポリッシュド・マン)という、オーストラリアの国際非営利団体が主体となっている活動ですね。全世界で18歳以下の子供のうち5人に1人が暴力の被害にあっていて、その加害者の9割が男性だそう。
そこで本来、女性がする機会が多いネイルを、あえて男性がすることで、周囲の注意を引き、会話の中でその経緯について話すことを目的としている活動です。実はすべての指ではなく、上記の「5人のうち1人が虐待にあっている」という統計にかけて、1本の指だけにネイルをするという、深い意味合いがポリッシュド・マン活動には込められています。Instagram等のSNSを通じて著名人が拡散していますし、もちろん日本人も参加できますので、この記事を読んだ人にも関心を持って頂ければと思います。

最後に、今後の展望について御聞かせください。

森脇さん:ネイルを通じてアスリートの役に立つという事に限らず、ネイリストの地位向上にも貢献したいと考えています。例えばカメラマンの方々にも人物撮影専門の方がいたり、風景撮影専門の方がいたりと、○○専門のカメラマンっていますよね? そのように、ネイリストにもデザイン専門のネイリストだけでなく、アスリート専門のネイリスト等、○○専門のネイリストがいても良いと思うんです。そうする事が、少しでもネイル業界の力になれればと思います。

髙野社長:まずは既存のネイル業界をさらに改善させること。創業時に比べるとネイル人口が増えているのは事実ですが、それでも女性のネイル実施率はまだ20%程度。まだまだ増やす事ができると思っています。
あとは先述と被る部分もありますが、やはり「ネイルの新しい価値を創造していく」という事にトライしていきたいですね。その一端が今回ご紹介したアスリートネイルです。
ネイルはオシャレとしての価値も充分にありますが、このようなネイル保護を通じて、よりパブリックな価値にしていこうと思います。そういった事の結果として、ネイルの力で社会を良くする事ができれば、とても嬉しいですね。

《文:Next Connect / 竹内 一平》

企業情報

株式会社TAT
本社:兵庫県西宮市日野町4-50
設立:2000年10月31日

【企業URL】 https://www.nailtat.com/tatweb/index.do