企業インタビュー

スポーツアール株式会社「スポーツ選手の価値を高めたい」

スポーツアール株式会社

志岐 遼介

代表取締役

「スポーツ選手の価値を高めたい」

プロローグ

今回インタビューを担当して下さった方は、イベントや講習会の企画・運営など、スポーツに関わる様々な事業を展開されているスポーツアール株式会社 代表取締役の志岐さん。専門学校でスポーツビジネスを教える講師も担当されている志岐さんに、今のお仕事を始めたきっかけや、スポーツ業界を目指す人へのアドバイスなども伺ってきました。

今のお仕事を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

「学生時代、私は近鉄バファローズの熱狂的なファンでした。でも大学4年時に球団合併騒動が起こり、応援していたチームが無くなってしまい、いわゆる野球難民になってしまいました。ファンとして、“もっとこうしたら球団を盛り上げることができたのでは、球団を存続させることができたのでは”と思うことがありました。今までは単純にチームを応援する立場でしたが、その時が初めてスポーツを経営、ビジネスとして意識した瞬間でした。

大学卒業後は一般企業に入社をしたのですが、当時やっていた仕事をJリーグのチームに提案したら通って、一緒に仕事をしました。その時に、自分の好きなことで仕事ができるのは楽しいなと思いましたね。でもその時は、それ以上は発展せず。その後2013年に転職をして、以前よりも自分の時間ができて、タイミング良く声を掛けてもらったスポーツビジネスの勉強会にたくさん参加していました。そこから急速に人脈が広がっていきましたね。スポーツボランティアもやりましたよ。スポーツビジネスの企画などもお手伝いするようになって、だんだんスポーツ関係の仕事の依頼が増えてきて。それで、きちんと受け皿を作らなきゃと思って今の会社を作ることになりました。」

現在ラグビーの普及振興も尽力されているとのことですが、なぜラグビーなのでしょうか?

「実家の近くに明治大学のラグビー部のグラウンドがあって、好きでよく見に行っていたんですよ。野球を見なくなってからは特に、休日でも試合を見に行っていました。2007年にフランスで開催されたラグビーワールドカップがあったのですが、たまたま見ていたら、やっぱりラグビー面白い!って感じて。ラグビーイベントにも参加するようになってからは、選手との近さに驚きましたよ。一流選手が皆本当に謙虚で、人として素晴らしいなと、間近でそう感じましたね。そういう選手をプロモーションしていったら参加している人も喜ぶのではと思い、ラグビー関連のイベントを企画するようになりました。関西でやっている人が少かったこともあり、ラグビーだったら私に聞いてみよう、というように声をかけてもらえるようになりました。

志岐さんはスポーツがお好きだからスポーツに関わるお仕事をしたいなと思われたのでしょうか?

「スポーツは全般的に好きです。でも好きだからというより、スポーツ選手の価値を高めたいと思っているんです。特に日本では、特殊な才能をもっている人が軽く扱われる傾向があると思います。例えば、ピアニストは相当な努力があって人前で演奏し、それ相応の対価を得ているのは当然ですよね。スポーツ選手も同じです。でもアスリートをイベントに呼びたい時、予算が無いから安くしてほしいとかボランティアでお願いしたいとか気軽に言う人が多いんです。私はもっと彼らの価値を高めたいと思い、今の仕事をしています。」

仕事をする上で意識されていること、気を付けていることはありますか?

「素早く判断をすること、ですね。この仕事は自分にできることなのか、誰かに任せた方がいいのか。10ある内1~5は自分、それ以外はAさんに任せる、など。 スピードを持って判断する、そういうスキルは大事だなと感じています。」

会社を作り始めて大変だったことは何ですか?

「個人で仕事をしている多くの人が悩んでいることだと思うのですが、会社という看板があっても自分を売らないといけないんです。自分の企画・サービスを売る際、ほしい金額というのがありますよね。でも本当にその金額で受けてくれるのかなって気を使ってしまって、例えば本当は10万ほしいところを3万にしてしまったことも。お金ほしいけど最初はいらないよ、って言ってしまったこともあって、そこは苦労しましたね。スポーツに対する価値をどう理解してもらうのか。金額の根拠を示すためには、自分の行動や仕事を相手に理解してもらう必要があります。自信をもって金額を言えるのかということがとても大切だと思います。」

やりがいを感じる時はどんな時でしょうか?

「2014年から毎年開催されている“関西セブンズフェスティバル”というラグビーの大会に携わっており、初開催時には今までにない取り組みとして、初めて大会の中にイベントを取り入れるということをしました。この取り組みを評価して頂き、大会後にラグビー界のレジェンドに“ありがとう”と握手を求められたんです。この時、この仕事やってよかったなと心から思いましたね。“関西セブンズフェスティバル”は2019年のラグビーワールドカップと東京五輪正式種目の7人制ラグビーを活性化させましょうと想いが込められています。初回から4年連続で開催して今年も無事に成功し、イベントも毎年ステップアップしていることから評価して頂いています。」

志岐さんは専門学校でスポーツビジネスを教える講師も担当されておりますが、スポーツの仕事したい人へのアドバイスをお願い致します。

「スポーツとの関わり方はたくさんあるので、まずはできるだけ視野を広げることが大切です。スポーツの仕事をする=メーカーやスポーツチーム、と考える人が多いと思いますがそれだけでは無く、たくさんの関わり方があります。一般企業でベーシックなスキルをつけてからスポーツ業界へ転職するという道もありますから。スポーツだけで飯を食うのは難しいですよ。どういう関わり方をするのが一番自分を発揮できるのか、慎重に賢く見極める必要があると思います。

またスポーツに関わる仕事は、ひとつひとつ組み立てる仕事です。スポーツは興行やイベントが多いので基本的には5W2Hを埋めていけばベースができます。まず自分で何か一つ企画してみてください。ターゲットは誰なのか、いくら費用が必要なのか、その積み重ねが興行やイベントになります。それと、スポーツを好きすぎるのが良くない時もありますね。スポーツの力を信じすぎてしまい集客人数を読み間違えてしまう、ということは起こりえます。例えば、“あの有名人がイベントに来たらお客様100名は来るだろう”と予測してしまって結果それほど集客できなかったなど。スポーツの力を信じることは良いことですが信じすぎると見誤るので、スポーツは客観的に見る必要がありますね。」

あとがき

元々スポーツが好きで、ファンとして“もっとこうしたら良いのでは”とビジネス視点で考えるようになったことが最初のきっかけだったという志岐さん。自分の好きなことをビジネスにするために、自ら興味があることに積極的に足を運び行動に移してきたことが今のお仕事につながっているのではないでしょうか。もちろんそれは簡単にできることではありませんが、志岐さんの“スポーツ選手の価値を高めたい”というような強い想いが、今のスポーツビジネスにとって非常に大切な事ではないかと感じました。

企業情報

スポーツアール株式会社 
“スポーツを通じて青少年の健全な育成と地域活性化への貢献を実現する”という経営理念のもと、平成27年9月に設立。スポーツ大会やイベントの企画・運営、スポーツ選手やチームのマネジメントなど、スポーツに関わる事業を多岐に渡り展開している。
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