企業インタビュー

身体の悩みから、独自の「卒業」

株式会社ALTURA

代表取締役CEO / 笹倉 榮人

~プロから学ぶ身体メディア~ そして、組織を活性化するマネジメントソリューションへ。

プロローグ

 今回紹介するのは【身体×IT×教育】の角度から、「身体革新」ならびに「世界中の人々のQOL向上(=生活の質向上)」に取り組んでいる株式会社ALTURA 代表取締役CEOの笹倉 榮人さんです。学生時代は、170cm弱と決して大きくない身長ながらもバレーボール競技で活躍。身長へのコンプレックスを解消すべく、身体の仕組みやトレーニングを学び、驚異的なジャンプ力を体得。「子供の頃から生物に関する知識は、自然と覚える事ができた」という適性もあり、医学的な観点から怪我や痛みに苦しむ患者と真剣に向き合ってこられました。2014年に独立以降、数々の患者にアプローチを施してきた中、2020年から身体に関する教育サービス「オンライン師匠」をリリース。その後も新サービスを続々展開中。

身体に関する関心や知識は、子供の頃から強かったのでしょうか?

 そうですね。幼少期の頃から父親に連れられ、魚採りやザリガニ採りに良く行っていた事もあってか、生物の構造や、動きについての関心は強かったと思います。
より一層に人間の身体について深く学ぶようになったのは、高校バレー時の影響。あまり身長の長短に左右されないポジションである「リベロ」として、奈良県内のバレー強豪校に進学し、入学まもない頃から試合にも出場していた中、夏ごろにピンチサーバーに配置転換され、試合の出場機会が激減してしまいました。どうしたら試合に絡めるのかと模索していると、当時W杯バレーでMVPを獲得したブラジル代表の「ジバ選手」が目に留まりました。身長2メートルを超える大男達が集まるコート内で、比較的低身長であるジバ選手が、尋常ではないジャンプ能力でスパイクを決め、圧倒的エースとして活躍しているシーンに衝撃を覚えました。それから、ジャンプ能力を向上される為の書籍を読んだりしていく上で、人間の身体に強い関心を持つようになりましたね。

↓ジバ選手 (※ 画像参照元: http://ur0.work/F5vO)

書籍を参考にしたトレーニングを通じて、ジャンプ能力が格段に向上したようですね?

 マイケル・ジョーダンの本を読み始めてから3カ月で、最高到達地点が35cmも伸びました(笑) 適切なトレーニングをすれば、希望のスキルアップに繋がる事が快感でしたね。最終的には競技は違えど、バスケットリングが掴めるようにまで成長。僕のように170cmに満たない身長でのダンクは、相当珍しいと思いますよ。
身体の構造をきちんと理解し、目的をはっきりとしたトレーニングやセルフコーチングを実施すれば人は変われるという事を、より多くの人達に知って欲しい。後々に紹介をさせてもらう、弊社の新サービス「オンライン師匠」にはそういった思いを込めています。

大学時代は相当ハードなスケジュールだったとか。

 大阪体育大学に進学し、体育会バレー部に入部したのですが、1カ月もしない内に退部しました。関西ではそこそこ強豪校とされていたのですが、当時の練習環境と反りが合わずで。もっと自分達が主体性をもってバレーと向き合いたいと思い、自身で社会人チームを発足しました。それも、身長が高くなくても強くなれるという事をアピールしたく“170cm以下”の選手限定で(笑)
 部活に所属しなかった分、スポーツトレーナーのコミュニティに所属。2007年に大阪で開催された世界陸上に出場する、スーパースター揃いのアメリカ代表の練習地が、偶然にも大阪体育大学だったんです。そこで世界トップクラスの選手らの筋肉や動き、選手の1日に触れる機会があり、本気でその道を目指すキッカケとなりました。
当時の私は「“その道”のトップは医師や!」と思い、スポーツドクターを目指すべく、医学部への学士編入に向けた勉学に励む事に。幸いにも、所属していた学校がスポーツ医学やバイオメカニクスに特化した大学であった為、学内の図書館には参考書が宝の山ほどありました。授業の他、図書館での勉強、そして塾講師のアルバイト、学士編入の予備校、臨床技術の習得。さらには社会人バレーでの活躍もしたかったので、学内のジムでのトレーニングにも励んでいた結果、家で過ごした記憶は殆んど無いような生活でしたね、、(苦笑)

大学卒業後は、どのような歩みを進めて来られたのですか?

 必死の勉学も残念ながら実らず、医学部への学士編入は諦めざるを得ない事に。今振り返ると日本国内に限らず、海外への編入等もチャンスを粘ってでも行っていればという後悔がありますが、当時の私はキッパリと諦めましたね。大学時代に教員免許は授業の一環で取得していたので、卒業後は舎監高校の教員に。その教員生活の中で、どうしても医学の事が忘れられず、教育が好きな自分と医学が好きな自分が葛藤していました。その中で【教育×医学】なおかつ「身体科学に関われるなら医師でもなくても良いやん!」というアイデアから、教員として1年間を全うした後に、大手接骨院に入社。そこで働くのと並行して、専門学校へ通い柔道整復師の知識を取得する生活を約3年間過ごしました。本来であれば国家資格の試験を受け、柔道整復師となるのが一般的だと思うのですが、私はある違和感があって試験は受けませんでした。

どのような違和感があったのですか?

 医療福祉業界を客観的に見つめ、身体科学を極めていく中で、なぜ患者のリピートを求める必要があるのだろうか?リピートするという事は「治っていない=施術者の知識や能力がない」という事ではないか?と感じ始めました。そういった経験から、一度会うだけで人生のターニングポイントを作れるような技術を身につけた人になろう!その糸口を見つけよう!と身体の研究や脳の仕組みを学び、2014年に【悩みから卒業できる整体】として独立。まずは身の回りの友人らへ主張での施術サービスを開始する事にしました。
 ここに至るまで、柔道整復師の知識のみならず、大学時代に猛勉強した医学的な部分、スポーツトレーナーとしての経験、そして自分が関心を持った事に関しては、様々な教授らへ海外の人であろうと直アポを取って積み重ねてきた知識等を全て活かし、患者さんと一生懸命に向き合ってきました。
 あらゆる角度から身体にアプローチできる強みを活かした結果、最初は口コミで広がっていった出張施術ですが、お陰様で今や2000名を超える方々に喜んでもらっています。私は医師ではないので「完治」とは言えませんが「卒業」という言葉を患者さんと共に意識するようにしています。身体を担当させてもらう前に、施術の目的設定を相談し、そこをクリアした時点で卒業証書を授与するといったような工夫をし、少しずつ信頼を積み上げていっています。

独立から6年間が経過し、2020年からは新たな教育サービスを展開されるのですね?

 今まで「患者様」「身体に悩む人々」を対象者にしていたのですが、さらに僕の子供の世代にでも安心して医療や福祉を受けられる、スポーツを楽しんで出来る体制を創ろうと考えたときに、医療福祉従事者が「疲弊している」状況では医療福祉の業界が破綻するという想いから、まず第1弾として 【オンライン師匠】という医療/スポーツの専門家から学べる身体メディアを立上げました。自分が知りたい身体情報を、その道を極めた専門家から学ぶ事が可能です。元バレーボール日本代表のエース 山本 隆弘 氏をはじめ、ロシアの名舞台演出家であるレオニード・アニシモフ氏等、グローバルに活躍されている様々なジャンルの師匠らにも協力をしてもらっています。
サイト内では「身体パーツ別」や「職業別」等、細かな検索設定が可能となっており、ユーザーが困っている身体の課題について、師匠らが動画を通じて分かり易く解説をしています。それぞれの師匠の想いがあり、考えや経験があります。ユーザー側は何を学ぶかを自らの意思で選べると共に、誰かの為にという想いでまとめ上げたそれぞれの形を、素直に表現できる場所こそがオンライン師匠です。

 対象者としては、医師、看護師、理学療法士、臨床検査技師、薬剤師、介護福祉士等の医療福祉従事者はもちろん、お子さんからお年寄りまで、健康や身体の悩みについて、臨床技術、リーダーシップ等などの医療福祉に関わる事について学びたい人は、全て対象となります。先述にもあるように、私は身長にコンプレックスを持っていましたが、元ブラジル代表のジバ選手を見たことで、自分自身に好転的な変化がありました。その出来事は私にとって非常に幸運でしたが、そういったコンプレックスや悩みを、そのままにしてしまう人もいるのではないかと思います。身体の悩みに応じて、自分に合った情報がすぐに見つける事で、どれだけの人が成長ということに対してポジティブでいられるかは、予想も出来ないほど影響を与えると確信しています。
 「オンライン師匠」がたくさんの人々にとって“身体の辞書”として役に立つツールとなる事を願っています。

オンライン師匠のリリース後は、教育サービスだけではなく、組織の活性化に関する新サービスの開発も始めたようですね?

「オンライン師匠」を進めている中で、もうひとつの壁にぶち当たりました。もともと「医療福祉従事者の教育を活性化できれば、未来が明るくなる!」と考えていたのですが、正直甘かったです。医療福祉組織に教育コンテンツの提案をしに何度か足を運んだのですが、ことごとく断られました。理由のほとんどが「教育は確かに大切だが、今は組織マネジメントの方が重要で、”採用”や”評価制度構築”を優先しなければならない」と。理想だけではなく、今の業界のペイン(課題)にとことん向き合おうと決め、医療福祉の組織を可視化できる新システムとして 【ALOLINK(アローリンク)】を開発しました。
脳学習と教育プログラムには自信があったので、さらにデータサイエンスを磨き、組織の人材の個性を把握し、1人1人にスポットライトを当てながら、組織を活性化させる方法を構築しました。それがALOLINKです。「医療福祉業界では、評価制度もうまく現場に落とし込めていない状況が多い」という看護師や療法士の声から、現場の人が輝きながら業務を行い、さらにオンライン教育までも自動化させるという、業務が増えない状況で教育を導入できるようなシステム開発を現場目線で行ないました。今では開発から数ヶ月ほどで病院やクリニック、介護施設、教育機関に導入され、採用、教育、キャリア構築、評価が一気通貫となり、組織のデータベースを構築していきながら、サステナブル(持続可能)な組織を形成していく一体化型システムとして導入して頂いています。

最後に、今後の目標を聞かせてください。

 医療福祉従事者を対象とする【オンライン師匠】、患者様や後遺症の当事者を対象とする【ALTURA Partners(自費リハビリのフランチャイズ)】、そして医療福祉組織の人事課題を解決する【ALOLINK】、これらをALTURA3本の矢(高みへ導く軸)として、医療福祉組織の様々な問題を解決していきたいと考えています。僕自身がセラピストであり、身体にコンプレックスがあったからこそ医療福祉現場、患者様の”心の声”を聞けると確信しています。そんな心の声を鵜呑みにせず、新しい価値を融合することで新しい業界のうねりを創り、課題解決していく方法を模索し続けたいですね。

《文:Next Connect 竹内 一平》2020年11月 執筆

関連情報

笹倉 榮人 / Hideto Sasakura
医療福祉テクノロジー企業 株式会社ALTURA創業者 代表取締役CEO / 1988年生まれ

 2014年にフリーランスセラピスト兼コンディショニングトレーナーとして独立後、2万件以上にアプローチ。ベトナム、シンガポール、中国上海、カタール、ドバイ、アメリカ等の海外を渡り、組織環境や身体重心からヒューマンパフォーマンスを予測するアルゴリズム「BC理論」を構築。コ・メディカル領域のフリーランスに対して経営サポート、臨床技術の講師として活躍し、2016年7月に株式会社ALTURA設立。2019年から個性、感情、マインドヘルス、能力、キャリア、成長環境を可視化し、PX(Patient Experience)を最適化する医療福祉特化型マネジメントシステム「ALOLINK」を開発。組織の従事するヒューマンパフォーマンスを向上させる環境予測アルゴリズムの研究を行なっている。2018年には世界新聞ニューヨークタイムズでアジアの若手リーダーとして香港で表彰。

【オンライン師匠】 / 【ALTURA Partners】 / 【ALOLINK(アローリンク)】といった様々なサービスを手掛ける。

本社所在地:大阪府大阪市福島区福島7-20-1 KM西梅田ビル2F
会社公式HP: https://altura.co.jp/